FAQ/ 河道の途中にある閉水路のモデル化¶
サイフォンなど、閉水路をモデル化する方法はありますか。
回答¶
プライスマンスロット (Preissman Slot) による表現が可能です。河道を作成し、その河道横断断面として、管路形状を与えてください。
図: プライスマンスロットの概念図
スロットの幅として、川幅の 1~10% 程度が適当と考えております。
ただし、DioVISTAでは水面幅が 1 cm以下の断面を作ることができないように制約をかけています。 したがって、最小幅は 1 cm以上にしてください。
スロットからの越流を生じさせないために、仮想壁を設定ください。また、当該区間にHQ式を設定しないでください。HQ式を指定すると断面表示でうまく表示されない場合があります。
なお、DioVISTAでは、下図のように上方が狭まった河道断面を設定することができます。
図: 上方が狭まった河道断面の設定例
なお、DioVISTAには、側溝・伏樋 というモデルがあります。この伏樋モデルでは、1次元河道モデル(円形断面+プライスマンスロット)を利用しています。その際、スロット幅を管の直径の 10% としております。この伏樋ですが、河川の途中につなぐことを想定してしていないため、今回のように河川構造物のモデル化にはご利用いただけません。
プライスマンスロットのスロット幅について¶
プライスマンスロットのスロット幅の値は、ある程度幅を持った経験的な数値であることが考えられます。
堀江ら(2020) によれば、スロット幅を管の直径の0.1 ~ 1%程度まで拡張しても、実用的なシミュレーションが可能とされています。
堀江ら, Preissmann Slot Modelのパラメータ同定法, 2020
これまで、解析精度を実用しうる範囲内に納めるとする条件のもとで、スロット幅 \(B_s\) をどの程度まで拡幅した流出シミュレーションが可能であるか、多くの検討・研究がなされてきた。これらより、スロット幅を, \(B_s /D_0\) = 0.001 ~ 0.01 程度まで拡幅しても実用的な流出シミュレーションが可能であるとの成果が導き出されている.
また、友近ら(2013) には、次の記載がありました。下記の内容からスロット幅は、0.4 ~ 2%と考えられます。
友近ら, 下水道管渠網の非定常圧力流れと圧力波伝播速度(スロット幅)算定式, 2013
海外モデルでは、経験的観点から、管渠直径に応じて、スロット幅は1 mm ~ 4 cm (\(D\)=0.25 m ~ 2.0 m)、圧力伝播速度は 10 m/s ~ 200 m/s (\(D\)=0.25 m ~ 2.0 m) を採用することが望ましいとされている。いずれにしても、経験的立場から推奨されているもので、そうした推奨の理論的根拠は明らかではない。
川池ら(2004)では、スロット幅が5%でした。
川池ら, 低平地河川流域での豪雨による都市氾濫解析, 2004
スロット幅は計算を安定的に行える最小値として管路幅の5%とする。
松枝ら(2009)では、スロット幅が8%程度になります(管径 1 mの場合の計算式: 113.14/4*9.8/10/10=0.077)。
松枝ら, 寝屋川流域における浸水被害軽減対策の検討, 2009
管路流の水面幅は次の式から得られるスロット幅を与える(\(A_s\): 通水断面積、\(B_s\): スロット幅)。
\(B_f = A_s g / a^2\)
ここに、\(a\): 圧力伝播速度であり、本モデルでは伝播速度を10 m/sとした。なお、Preissmanのスロットモデルとしてモデル化(以下、下水道管モデルという)する下水道管は、公共及び流域下水道台帳を基に \(\phi\) 1000 mm以上の管とした。
以上から、ある程度幅を持った経験的な数値であることが考えられます。